2025年7月24日
2025年5月、Enlightenチームは最新のパッチバージョンであるEnlighten 4.03.P1をリリースしました。このバージョンはUnreal Engine版のインテグレーションに焦点を当て、Lumen ReflectionやMegaLightsとのEnlightenの組み合わせなど様々な機能改善を行っております。
その中でも本リリースにおける一番のポイントは、長らくベータサポートと位置付けていたWorld Partitionとの組み合わせを、Production Readyとして正式にサポート開始した点です。Enlighten 4.03.P1より、World Partitionを使用するゲームにおいてもEnlightenを効率的にセットアップして、高品質で低負荷なグローバルイルミネーションを簡単に導入することができます。
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本記事では、World Partitionを使用するシーンでEnlightenの設定を行っていく際に、4.03.P1で新しく実装された機能がどのように活用できるのか、お見せしていきたいと思います。
World Partitionのシーンでの具体的な例に移る前に、前提となるEnlightenの設定について改めてご説明させてください。Enlightenの使用経験があり、ワークフローに詳しい方は読み飛ばしていただいても構いません。
Enlightenは、ハイエンドからローエンドのプラットフォームまで、さまざまな環境に高品質で低負荷なリアルタイムグローバルイルミネーションを提供します。ただし、シーン規模が大きくなってくると、各オブジェクトを適切にセットアップしておかなければ、開発時の事前処理のイテレーション効率が低下したり、実機でのパフォーマンスが悪化したりしてしまうケースが出てきます。
特に影響が大きい要素としては、ライティングモードやライティング解像度が挙げられます。これらを含む基本的なシーンセットアップの流れについては、こちらのチュートリアルを参照してください。
今回は特にライティング解像度の設定について、少し掘り下げていきます。
ライティング解像度は、Enlightenによる間接光がどの程度の精度で適用されるのかを決定します。見た目とパフォーマンスのバランスを取るためには、各オブジェクトの解像度を慎重に検討する必要があります。
ライティングモードがContribute Lightmapであるオブジェクトには、Enlighten Qualityというプロパティで解像度を設定できます。オブジェクトの種類や配置場所に応じて、以下のように設定していくことで、ある程度クオリティとパフォーマンスのバランスがとれるでしょう。
一方、ライティングにプローブを使用するよう設定されている場合、Enlighten Adaptive Probe Resolutionというプロパティで解像度を設定します。この値は、オブジェクト周囲に配置されるプローブの配置間隔を決定する際に用いられます。こちらについても同様に、
といったように設定することで、最小限のプローブ配置で高い精度が必要な部分をうまくカバーすることができます。更なる低解像度のオプション(1/32, 1/64, 1/128, 1/256)もありますので、広大なオープンワールドでは是非それらもご活用ください。
実際の開発環境では、アクター単位で解像度を設定していくことは困難です。そこで、レベルのデフォルト設定を利用して大まかな指定を行うことにより、効率的にシーンを構築していきます。基本的には中解像度を基準として設定し、プレイヤーがほとんど近づかないエリアが中心のレベルについては低解像度を割り当てます。一部高い精度が求められる領域にあるアクターに対してのみ高解像度を指定します。なお、プローブについては解像度を局所的に上げたい領域に対して、Adaptive Probe Volumeを配置する方法も有効なアプローチです。
次のセクションからは、World Partitionを使用したシーンにおいて、ライティング解像度をどのように設定していけば良いか、具体的なスクリーンショットを交えながら紹介していきます。
World Partitionの編集時にはサブレベルがないため、従来のEnlightenでは前述のような大まかな指定が上手く適用できませんでした。一般にWorld Partitionを使用するシーンは非常に広大で、膨大な数のアセットが配置されているため、レベルに対応する粒度の設定ができなければ設定のコストが大きく跳ね上がってしまいます。そこで、EnlightenはWorld Partitionのグリッドセル単位で値を設定できるようにするというアプローチを採用しました。
これによって各オブジェクトの解像度は次のように決定されます。
各アクターに設定された値が最終的にどのようになっているのか、またどこで設定した値が反映されているのかを確認したい場合は、アクターのComputed QualityやComputed Probe Resolutionを参照してください。
From Actor | From Cell | From World |
---|---|---|
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Enlighten 4.03.P1では、グリッドセル単位の設定を簡単に行えるように、ミニマップから複数のグリッドセルを選択し、まとめて設定できるインターフェースを用意しました。大まかなオブジェクトの属性は近傍エリアでほぼ同一のものが集まりやすいため、複数のセルを一括で設定できるのは非常に合理的です。
Enlighten Cell Quality | Enlighten Cell Probe Resolution |
---|---|
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値の設定は個別のセル単位でも行えますし、領域ごとに行うこともできます。
セル単位 | ![]() |
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領域単位 | ![]() |
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また、アクターの詳細パネルから所属するセルの値を設定することもできます。シーンの状況に合わせて柔軟にセットアップできますので、お使いのシーンに合う方法をご選択ください。
World Partitionのシーンでは、デフォルトの解像度の初期値は中解像度(Medium, 1/4)となっています。プレイヤーが動き回る多くのエリアはこの設定で問題ありませんが、広く開けた空間や近づくことのできない場所は低解像度(Low, 1/16)を割り当ててください。ワールドの末端などにあり、非常に遠い距離からしか見えない場所は、更に低い解像度(Background, 1/64)にするとより効率的になります。
ここで紹介した機能以外にも、Enlighten 4.03.P1ではWorld Partitionを使用した開発が円滑に行えるよう、さまざまなアップデートを行っており、World Partitionを使用している実際の開発現場でEnlightenをご活用いただける環境が整いました。この機会に是非Enlighten 4.03.P1をお試しください。
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