テクニカル・インサイト

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2010年5月14日

第二回:GDC2010レポート
その②

  • アメリカでは、毎年、GDC(Game Developer Conference)という、ゲーム開発者会議が開催されています。ゲーム開発者向けのカンファレンスとしては世界最大級で、ここ数年はサンフランシスコでの開催が定番となっています。
    今年も、例年通り、3月9日から13日まで、サンフランシスコのMoscone Centerと言うコンベンションセンターでの開催となりました。  世界的な経済不況下での開催となりましたが、来場者は18,000人を超え、意外にも、過去最多の参加者を記録したとのことです。 GDCでは400を超えるゲーム開発に関連した論文発表、講演、パネルディスカッションなどのセッションが行われますが、これ以外に展示ホールを利用したエキスポ・イベントも併催されます。
    今年のGDC 2010では、シリコンスタジオが、このエキスポ・イベントにブース出展を行いました。
    今回のコラムでは、このGDC2010の俯瞰レポートをお届けすると共に、シリコンスタジオブースの紹介もしていこうと思います。
  • GDC2010レポート続き・・・
  • インテルやAMDなどのCPUメーカー、NVIDIAなどのGPUメーカー、ソニー、任天堂、マイクロソフトなどのゲームプラットフォームホルダーなどの大手企業系ブースはどこも盛況でしたが、なかでも新製品をリリースしたばかりのブースは特に人気が高かったようです。 具体的には前述したPS Moveの発売を予告したばかりのソニー(SCE)、DirectX11世代のGPUを正式発表したばかりのNVIDIAなどが特に人気が高かったように見えました。
    intel_booth
    インテルブース。近年はゲーム開発者への支援を強めている。
    sony_booth
    ジェスチャー入力型のゲームコントローラは、次世代ゲーミングインターフェースとして注目されており、
    ソニー(SCE)ブースでは、そのPS Moveを一般ユーザーに先駆けて実際に体験できるとあって人気が高かった。
    nvidia_booth
    NVIDIAブースでは、初公開となったDirectX11世代のGPU「GeForce GTX480」の実動デモが行われた。
    これでDirectX11世代のGPUはAMD(ATI)とNVIDIA、双方で揃ったことになる。
    任天堂のwiiに始まり、ソニーのPS Move、そしてマイクロソフトのプロジェクトNATALに至るまで、最近では、そうした肉体の動きをゲームインターフェースにする試みが盛んですが、このタイプの展示で人だかりが多かったのはベンチャー系企業の米Virtusphere社のブースでした。  製品名も社名と同じVirtusphereは、いわゆるエクササイズ系のゲームコントローラとも言うべきものです。 樹脂製で出来た球体の内部にユーザーが入り、そこで歩き出すと球体が回転します。 その回転速度と回転方向を検出する事で移動量を算出、自身のアバター(キャラクター)を仮想空間内を動かすことが出来る…というシステムです。 つまり、仮想空間内を自分の脚で歩き回れる感覚が味わえるのです。 デモでは、被験者がHMD(ヘッド・マウント・ディスプレイ)を被ってこのVirtusphere内に入り、一人称シューティングゲームをVirtusphereにてプレイすることができるようになっていました。  樹脂製の球体はそれなりに重量があり、一度回転し出すと慣性の法則により、なかなか急停止や方向転換が出来ません。 なので方向転換や、歩くのをやめた途端に転んでしまう被験者が多く、その様子を見てブースを取り囲んでいる観客が爆笑するという流れまでがデモ…となっていました。 一見しただけでは、どこまで本気なのか分からない展示でしたが、このVirtusphere、実は北米ではUS$45,000にて発売が開始さけたとのことです。 こうしたユニークな展示にお目にかかれるのもGDCの展示会場の楽しみの1つです。
virtusphere
Virtusphere社のブース。スターウォーズのデススターの模型ではなく、ゲームコントローラ。
virtusphere2
球体内部で走るとその動き通りにゲーム内シーンを動き回ることが出来る…
という仕組み。ハムスターの"回し車"の、人間用・全方位対応版という感じ?
  • セッションレポート~様々な技術セッションが開催
  • GDCでは、毎年、初日はチュートリアルと呼ばれる、業界入門者向けや、過去1年間の各技術テーマごとの基本情報を整理するセッションが執り行われます。  3Dグラフィックス関連では、2009年秋にWindows 7が発売された直後と言うこともあり、Windowsプラットフォーム向けのマルチメディアコンポーネントAPIのDirectX11にまつわるセッションやWindows Phone 7にまつわるセッションが人気を集めていました。
    DirectXといえば、その花形APIは3DグラフィックスAPIであるDirect3Dです。なかでもDirectX11のDirectX3D11では、テッセレーション・ステージの導入が脚光を浴びています。 テッセレーションとは、線分やポリゴンをGPU側で自動的に分割する仕組みです。 これまでGPUメーカーがそのGPUの独自仕様として提供してきたことは過去何度もあったのですが、他メーカーのGPUで使えないことがネックとなり、あまり積極的な活用がなされませんでした。 今回のDirectX11(Direct3D11)のテッセレーションは、標準化されたDirect3D11の共通仕様として組み込まれたので、その意味では、過去のものとは違い、業界も期待しているというわけです。  毎年、マイクロソフト、ATI(AMD)、NVIDIAといった業界のデファクトスタンダードを作り出している3社の代表者が登壇するチュートリアルセッション「Advanced Visual Effects with Direct3D」ではNVIDIAが、テッセレーションを3DグラフィックエンジンのLOD(Level of Detail)に効果的に組み込むためのヒントを示していました(下図)。 NVIDIAのDirectX11世代の新GPU、GeForce GTX 400シリーズは、その内部コアにテッセレーションエンジンを複数持つ仕様となっているため、テッセレーションステージの啓蒙活動には力が入っているのです。
tessellation1
tessellation2
視点から距離が遠いオブジェクトは少ないポリゴンで、近いオブジェクトは多ポリゴンで…
という、このLODの仕組みをGPU側の機能を活用して実現できるのがDirect3D11のテッセレーション機能
tessellation3
オブジェクトの内部よりも輪郭の方に多くのポリゴンを
割くようにしてテッセレーションを行う「面の向き適応型テッセレーション」。
前出の、最も基本的なLODとなる「距離適応型テッセレーション」に加えて実践したい仕組み。
tessellation4
オブジェクトの内部であっても、面の勾配のきつい箇所には多くのポリゴンを割くようにしたい。
これを実践するのが「密度適応型テッセレーション」
  • GDC会期中、OpenGLをはじめとしたオープンプラットフォームを統括するKHRONOSグループも、DirectXに負けじと、新しい「OpenGL4.0」の発表を行いました。  OpenGL4.0は、非Windowsプラットフォーム向けの3DグラフィックスAPIの最新版で、これにより、Direct3D11世代の最新GPUを非Windowsプラットフォームでも活用できるようになります。 そうです、前出のテッセレーションステージなどが、非WindowsプラットフォームであるMacOSやLinuxなどにおいても活用が出来るようになるのです。  KHRONOSは、この他、2012年勧告予定のHTML5にて採用予定の3D対応グラフィックスAPI「WebGL」の発表も行いました。 HTML5対応Webブラウザであれば、このWebGLを活用することで、将来的にはAdobe FlashやマイクロソフトのSilverLightのようなプラグインソフトウェア無しでも、JavaScriptから3Dグラフィックスが取り扱えるようになります。
KHRONOS_openGL40
公開された「OpenGL4.0」のレンダリングパイプライン。
Direct3D11とはテッセレーションステージを構成する各シェーダーの名前が異なっているのが興味深い。
Direct3Dと名称を変えるのはOpenGLのこだわり。
KHRONOS_webGL
KHRONOSグループは「WebGL」も発表。
Webブラウザで本格的なプログラマブルシェーダ・グラフィックスが動かせる日は近い。
Quake3_stage
Ambiera社は独自開発の自社WebGLベースの3Dグラフィックスエンジン
「CopperLicht」(http://www.ambiera.com/copperlicht/)にて
「QUAKE3」のステージの表示を行うデモを公開している。
  • ところで、OpenGLには、組み込み機器向けのサブセット版であるOpenGL/ES2.0がありますが、今回のGDCでは、前出のEPIC GAMESがUNREAL ENGINE3のOpenGL/ES2.0移植版を公開して注目を集めました。 UNREAL ENGINE3がiPhoneで動作する様子はなかなかインパクトのある光景だったと言えます。
unreal_iphone
GDC会場で話題に上ることが多かったUNREAL ENGINE3のiPhone版
  • 会期2日目以降は、各著名ゲームで実践されたテクニックを、その開発者自身がプレゼンテーションするという贅沢なセッションが数多く執り行われます。  特に人気が高かったのは、GOTY賞に輝いた「Uncharted2」関連のセッションでした。 Uncharted2のレンダリング関連のセッションの1つでは陰影計算の次元をガンマ空間にするのか、線形にするのか、統一しなければならない、と言う基本的な話題から、CELLプロセッサを活用した環境光遮蔽効果であるSSAO(Screen Space Ambient Occlusion)エフェクトの解説がなされていました。  UBISOFTの「Splinter Cell Conviction」ではDepth Peeling(深度剥離)のテクニックを活用した、SSAOとは異なるアプローチの環境光遮蔽効果の仕組みを紹介していました。 この他、ステルスゲームらしく、「誰が誰に見えているか(見えていないか)」を、動的な3Dシーンに対しても正確に評価できるOcclusion Queries(遮蔽調査)の仕組みについても語られました。  来年の2010年度のGOTY賞レースには確実に絡んでくると思われる「God of WarIII」の影生成にまつわるセッション、リアルな人肌表現が話題を集めたボクシングゲーム「Fight Night Round4」のスキンシェーダにまつわるセッションも来場者の興味を集めていました。 今年のGDC2010の技術関連セッションは、地に足の付いた実践的な内容が多く目立ち、PS3やXbox360というハードウェアへの理解が成熟してきたことを実感させてくれました。
spilinterCell
SSAOとは異なるアプローチの環境光遮蔽効果を実装した「Splinter Cell Conviction」
uncharted2
GOTY受賞効果もあってか、超満員となった「Uncharted2」関連のセッション。
fightaround4
人肌表現の実践テクニックについて語られた「Fight Night Round4」のセッション。
  • おわりに
  • さて、駆け足でGDCを紹介してきましたが、GDCの雰囲気は伝わったでしょうか。
     GDCは、既に、来年度の開催も決定しており、会期は若干例年よりも早まり2011年、2月28日から3月4日までとなるようです。  来年度は、2011年に発売されると言われる新しい任天堂の携帯ゲーム機「3DS(仮)」についてのアナウンスや関連セッションがあるのでしょうか。 注目されるところです。  また、今年以上に「ゲームと立体視」に関わるセッションも増えることでしょう。
    今年のGDCはソーシャルゲームや携帯電話関連の話題が多かったのですが、今年発売されたばかりのApple「iPad」が、さらにこの流れに大きな影響を及ぼしそうです。  据え置き型ゲーム機の次世代機の話題はまだ聞こえてきませんが、来年のGDCでは、プラットフォーム・ホルダーの基調講演の復活とともに、何かしらアナウンスがあればいいですね。  それと、やはり、Game Developers Choice Awardsでの、日本発のゲームタイトルの返り咲きにも期待したいところです。
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